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21 失恋

ผู้เขียน: 鈴田在可
last update วันที่เผยแพร่: 2026-03-11 21:06:53

 その日はよく晴れた日だった。

 長めの春が終わり、季節は苛烈な夏に向かおうとしている。

 ヴィクトリアはようやく、シドに捕まることなくリュージュを見つけることができた。

 ヴィクトリアは草原に座り込むリュージュの姿を見て安堵の笑みを浮かべる。

 会いに行くと約束したのに思ったより時間がすぎてしまった。怒ってやしないかと思ったが、リュージュはヴィクトリアに気づくと満面の笑みを浮かべた。リュージュはいつでも自分を温かく迎えてくれる、そう思った。

 けれど、違う。

(匂いが違う……)

 ヴィクトリアは足を止めた。

 リュージュから、サーシャの匂いがする。

 会っただけ、手を繋いだだけ、ただ抱きしめ合っただけ、その程度ではつかない濃いめの匂いがこびりついている。だからといって、体を契ったほどではない。とある行為をした時にだけつく、独特の濃さの匂い。

(これは、キスしてる……)

 目の前が真っ暗になって立ち尽くしていると、リュージュの方から走り寄ってきた。

 ヴィクトリアは咄嗟に下を向いた。

 笑顔で、返す――多分それが正しいのだろう。けれどヴィクトリアは、上手く表情を作ることができなかった。

「ヴィクトリア?」

 リュージュが怪訝そうな様子で、長い銀髪に隠れたヴィクトリアの顔を覗き込もうとしてくるので、彼女は痛みをこらえるような表情を浮かべて、顔を上げた。

「ごめん、ちょっと足が痛くなっちゃって」

「そうなのか? 大丈夫か?」

「たいしたことないから大丈夫よ」

 そう言ったのに、リュージュは屈んで、「足のどこが痛いんだ?」と言いながら心配してくる。

(嘘なのに、優しくしないで。泣きそうよ)

 ヴィクトリアはリュージュを振り切るように、その場からスタスタと歩いてみせた。

「ほら、歩けるから大丈夫みたい。気のせいだったのかも」

 そう言って、ヴィクトリアは今度こそ笑顔を貼りつけた。

「本当か? 痛かったら無理するなよ。そうだ、この後サーシャに会うんだ。足の状態を診てもらったらどうだ? 何か薬もらっとけよ」

 ヴィクトリアは頭をぶんぶんと思いっきり左右に降った。

「いい! それはいいから! 本当に大丈夫!」

「そうか? ならいいんだけどさ」

「えっと…… サーシャに会うのね。それじゃ私はお邪魔かな。リュージュの顔を久しぶりに見られてよかったわ。私は部屋に戻るね」

「ちょっと待て」

 踵を返して足早に歩み去ろうとしたが、リュージュに腕を掴まれた。

 ヴィクトリアは振り返ることができない。

「実はさ、昨日ようやくサーシャから返事がもらえたんだ。俺の番になってくれるって」

(胸が苦しい。助けて。誰か助けて)

「もちろん今すぐってわけじゃなくて、もっとお互いをよく知ってからにしようってなったんだけどさ。ヴィクトリアに一番に知らせたかったんだ。本当は今日またお前の部屋に行こうと思ってたんだけど、会えてよかったよ」

 ヴィクトリアは泣きそうになるのを耐えていた。早く一人になりたかった。

「ヴィクトリア?」

 ヴィクトリアはリュージュに背を向けて黙ったままだったが、やがて顔を上げ、振り向いた。

「おめでとう! よかったね! もう、いきなりだったから本当にびっくりしたよ! 二人のこと祝福するわ! お幸せに!」

 ヴィクトリアは今できる最大限の笑顔を貼りつけてリュージュを見上げた。こんな時でも笑顔を作れてしまうことが悲しい。

 祝いの言葉を紡ぐヴィクトリアの瞳が少しだけ潤んでいた。

 リュージュもヴィクトリアの表情を見て、弾けるような輝く笑顔を返した。

「ありがとう、ヴィクトリア。諦めなくて良かった。お前のおかげだ」

 ******

 逃げるようにリュージュの元から去り、闇雲に走った。できるだけ人気のない所に行こうとして、気づけば里の端の方にある草むらの中に座り込んでいた。この辺は魔の森の近くで、あまり手入れがされていない。人の目からヴィクトリアを隠してくれる。

「うっ……っ……ううっ………」

 際限なく涙があふれて止まらない。

(心のどこかで、結局最後にリュージュは私を選んでくれるんじゃないかって思ってた)

 仲の良さは自覚していたし、自惚れていたのかもしれない。

 リュージュに恋焦がれながら、でも同時に、いつかリュージュから離れるつもりでもいた。

 リュージュはどこかでそれをわかっていたのではないだろうか。

 これは当然の結果だ。

 本当に欲しいと思って行動しなかった。いつか逃げ出すつもりで、リュージュと真剣に向き合ってこなかった。「俺を頼れ」と言ってくれたのに、その手を取らず、その場その場でごまかしてばかりいた。

 勇気を出して、本当の自分の気持ちを伝えていたら、結果は今とは違っていたかもしれない。

(好きだって、ちゃんと言うべきだった)

 もしもその結果、思いを受け入れてもらえなかったとしても、別れが待っていたとしても、全て覚悟して自分の気持ちに正直に生きるべきだった。

 そうしておけばせめて、こんなにも後悔という自責の念に駆られることはなかったはずだ。

 ヴィクトリアにとって、失ったものは大きすぎた。

(お母さまが死んでからの私の人生は、一体なんだったんだろう)

 ただ時間だけが、虚しく過ぎて行っただけだった。

(私は何もしなかった。常に受け身で、状況に流されていただけ)

 何も手に入らなくて当たり前だ。

 ******

(一人になりたくてここまで来たのに、何でよりによってこんな時に、この人は現れるの……)

 泣き続けて酷い顔になっているはずで、誰にも見られたくないのに、シドは腕を掴んで暴こうとしてくる。

 顔を無理矢理上げさせられると、神妙な面持ちをしたシドと目が合った。

 シドは何も言わなかった。泣きじゃくるヴィクトリアを腕の中に抱き入れると、まるで幼子をあやすように、背中を軽くトントンと叩いてくる。

 泣いていいと、言われているようだった。

「シド……」

 ヴィクトリアはシドに縋りついた。初めて自分からシドを求めてしまった。

 ヴィクトリアはシドの胸で号泣し続けた。

 ――その実、シドはヴィクトリアを逃さないようにとその体に手を回しながら、ほくそ笑んでいた。

 その表情にヴィクトリアが気づくことはなかった。

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