เข้าสู่ระบบその日はよく晴れた日だった。
長めの春が終わり、季節は苛烈な夏に向かおうとしている。
ヴィクトリアはようやく、シドに捕まることなくリュージュを見つけることができた。
ヴィクトリアは草原に座り込むリュージュの姿を見て安堵の笑みを浮かべる。
会いに行くと約束したのに思ったより時間がすぎてしまった。怒ってやしないかと思ったが、リュージュはヴィクトリアに気づくと満面の笑みを浮かべた。リュージュはいつでも自分を温かく迎えてくれる、そう思った。
けれど、違う。
(匂いが違う……)
ヴィクトリアは足を止めた。
リュージュから、サーシャの匂いがする。
会っただけ、手を繋いだだけ、ただ抱きしめ合っただけ、その程度ではつかない濃いめの匂いがこびりついている。だからといって、体を契ったほどではない。とある行為をした時にだけつく、独特の濃さの匂い。
(これは、キスしてる……)
目の前が真っ暗になって立ち尽くしていると、リュージュの方から走り寄ってきた。
ヴィクトリアは咄嗟に下を向いた。
笑顔で、返す――多分それが正しいのだろう。けれどヴィクトリアは、上手く表情を作ることができなかった。
「ヴィクトリア?」
リュージュが怪訝そうな様子で、長い銀髪に隠れたヴィクトリアの顔を覗き込もうとしてくるので、彼女は痛みをこらえるような表情を浮かべて、顔を上げた。
「ごめん、ちょっと足が痛くなっちゃって」
「そうなのか? 大丈夫か?」
「たいしたことないから大丈夫よ」
そう言ったのに、リュージュは屈んで、「足のどこが痛いんだ?」と言いながら心配してくる。
(嘘なのに、優しくしないで。泣きそうよ)
ヴィクトリアはリュージュを振り切るように、その場からスタスタと歩いてみせた。
「ほら、歩けるから大丈夫みたい。気のせいだったのかも」
そう言って、ヴィクトリアは今度こそ笑顔を貼りつけた。
「本当か? 痛かったら無理するなよ。そうだ、この後サーシャに会うんだ。足の状態を診てもらったらどうだ? 何か薬もらっとけよ」
ヴィクトリアは頭をぶんぶんと思いっきり左右に降った。
「いい! それはいいから! 本当に大丈夫!」
「そうか? ならいいんだけどさ」
「えっと…… サーシャに会うのね。それじゃ私はお邪魔かな。リュージュの顔を久しぶりに見られてよかったわ。私は部屋に戻るね」
「ちょっと待て」
踵を返して足早に歩み去ろうとしたが、リュージュに腕を掴まれた。
ヴィクトリアは振り返ることができない。
「実はさ、昨日ようやくサーシャから返事がもらえたんだ。俺の番になってくれるって」
(胸が苦しい。助けて。誰か助けて)
「もちろん今すぐってわけじゃなくて、もっとお互いをよく知ってからにしようってなったんだけどさ。ヴィクトリアに一番に知らせたかったんだ。本当は今日またお前の部屋に行こうと思ってたんだけど、会えてよかったよ」
ヴィクトリアは泣きそうになるのを耐えていた。早く一人になりたかった。
「ヴィクトリア?」
ヴィクトリアはリュージュに背を向けて黙ったままだったが、やがて顔を上げ、振り向いた。
「おめでとう! よかったね! もう、いきなりだったから本当にびっくりしたよ! 二人のこと祝福するわ! お幸せに!」
ヴィクトリアは今できる最大限の笑顔を貼りつけてリュージュを見上げた。こんな時でも笑顔を作れてしまうことが悲しい。
祝いの言葉を紡ぐヴィクトリアの瞳が少しだけ潤んでいた。
リュージュもヴィクトリアの表情を見て、弾けるような輝く笑顔を返した。
「ありがとう、ヴィクトリア。諦めなくて良かった。お前のおかげだ」
******逃げるようにリュージュの元から去り、闇雲に走った。できるだけ人気のない所に行こうとして、気づけば里の端の方にある草むらの中に座り込んでいた。この辺は魔の森の近くで、あまり手入れがされていない。人の目からヴィクトリアを隠してくれる。
「うっ……っ……ううっ………」
際限なく涙があふれて止まらない。
(心のどこかで、結局最後にリュージュは私を選んでくれるんじゃないかって思ってた)
仲の良さは自覚していたし、自惚れていたのかもしれない。
リュージュに恋焦がれながら、でも同時に、いつかリュージュから離れるつもりでもいた。
リュージュはどこかでそれをわかっていたのではないだろうか。
これは当然の結果だ。
本当に欲しいと思って行動しなかった。いつか逃げ出すつもりで、リュージュと真剣に向き合ってこなかった。「俺を頼れ」と言ってくれたのに、その手を取らず、その場その場でごまかしてばかりいた。
勇気を出して、本当の自分の気持ちを伝えていたら、結果は今とは違っていたかもしれない。
(好きだって、ちゃんと言うべきだった)
もしもその結果、思いを受け入れてもらえなかったとしても、別れが待っていたとしても、全て覚悟して自分の気持ちに正直に生きるべきだった。
そうしておけばせめて、こんなにも後悔という自責の念に駆られることはなかったはずだ。
ヴィクトリアにとって、失ったものは大きすぎた。
(お母さまが死んでからの私の人生は、一体なんだったんだろう)
ただ時間だけが、虚しく過ぎて行っただけだった。
(私は何もしなかった。常に受け身で、状況に流されていただけ)
何も手に入らなくて当たり前だ。
****** (一人になりたくてここまで来たのに、何でよりによってこんな時に、この人は現れるの……)泣き続けて酷い顔になっているはずで、誰にも見られたくないのに、シドは腕を掴んで暴こうとしてくる。
顔を無理矢理上げさせられると、神妙な面持ちをしたシドと目が合った。
シドは何も言わなかった。泣きじゃくるヴィクトリアを腕の中に抱き入れると、まるで幼子をあやすように、背中を軽くトントンと叩いてくる。
泣いていいと、言われているようだった。
「シド……」
ヴィクトリアはシドに縋りついた。初めて自分からシドを求めてしまった。
ヴィクトリアはシドの胸で号泣し続けた。
――その実、シドはヴィクトリアを逃さないようにとその体に手を回しながら、ほくそ笑んでいた。その表情にヴィクトリアが気づくことはなかった。
その日の真夜中―― 深い眠りに落ちていたヴィクトリアは、誰かの声を聞いた気がした。『ようやく会えるな』 ヴィクトリアはその声に導かれるように目を覚ました。すると、腹部に痛みがあることに気づく。痛みは等間隔でやって来ていた。 ついに陣痛が来たのかと思ったヴィクトリアは、ドキドキしながら隣で寝ていたリュージュを起こした。「何っ!」 陣痛が来たかもしれないと伝えると、リュージュはすぐに覚醒した。「よし! 医療棟に行くぞ!」「待って! 荷物! 入院用の荷物を持って行かないと!」「そうだった!」 ヴィクトリアを姫抱きにしてそのまま勇んで出立しようとするリュージュは、少し気が動転しているようだった。 リュージュはバッグを肩に担いでヴィクトリアを抱き上げると、急いで医療棟に向かった。「も、も、もうちょっとゆっくり走って!」 最初リュージュが全速力を出すものだから、ヴィクトリアは悲鳴を上げた。「わ、わわわ、わかってるっ! ごめんっ!」 自分と同じく出産への動揺継続中のリュージュと共にたどり着いた医療棟で、ヴィクトリアはそのまま丸一日陣痛に苦しむことになった。 ****** 与えられた部屋で痛みに耐え、そろそろ生まれるから息んでと言われる頃には、ヴィクトリアの体力は底を尽きかけていた。「ヴィクトリア! 頑張れ! ヴィクトリア!」 リュージュが手を握りそばで励ましてくれるが、何度息んでもお産が進んでいる気配はなく、長引く出産によって次第に意識が遠くなっていく。「……体……腰が……狭……」「……そんな! ……! ……! ヴィクトリア!」 朦朧とする意識の狭間で、リュージュと医師が何やら深刻そうな話をしているのが聞こえたが、内容まではよくわからない。 そのうちに
新居への引っ越しも終わり、夏になり、秋も過ぎ、ヴィクトリアはリュージュと幸せな日々を送った。 ただ、穏やかなその日々にも懸念事項はあった。 夜、リュージュと共に寝室に入ったヴィクトリアは、そのつもりでリュージュと抱擁しキスを交わした。 目立ってきたお腹に障らないように優しくベッドに横たえられると、ヴィクトリアの服の中にリュージュの手が忍び込んでくる。 ヴィクトリアはリュージュに愛撫される感覚にうっとりしながら身を任せていたが、突然、腹の中がウゴウゴと蠢き出し、またか、という思いに囚われた。「痛い…… 痛いわ……」 胎児が腹の中で暴れ出し、至る所を蹴られる。 あと数ヶ月で生まれるほどになったヴィクトリアの赤子は、胎児とは思えないほどに力が強く、腹を突き破って出くるんじゃないかと思う時もある。 腹の子は両親が仲よくしようとするのを邪魔したいのか、リュージュとよい雰囲気になると、毎回ではないがヴィクトリアの体内で殴る蹴るの大暴れをする。イチャイチャしたくても痛くてそれどころではなくなってくるのだ。 何もしてこない時はたぶん胎の中で寝てるのだと思う。「またか? 大丈夫か?」「痛っ!」 リュージュがヴィクトリアに声をかけて体に触れようとすると、みぞおちあたりに強烈な一撃が入って、ヴィクトリアは悶絶した。「リュージュ、ごめんね…… しばらく離れてて……」 リュージュと性的な触れ合いさえしなければ、赤子もそのうちに静かになる。 しかしリュージュはムッと眉を寄せ、ベッドに座るヴィクトリアの膨れた腹の前に顔を寄せた。「おいお前! ヴィクトリアは俺のだからな! お前の母さんだけど、でも俺の―― うわあっ!」 言葉の途中でヴィクトリアの腹が服の下がグニュンと動き、リュージュは寸前で避けたが、まるで先ほどまでリュージュの顔があった場所を殴ろうとするかのように、腹部が突き出た。「ううっ…… い、痛い……」「大丈夫か?」
ヴィクトリアはリュージュに連れられて、引っ越し先の候補であるという家の下見に向かっていた。 オニキスが新しい族長になることが決まり、数十年ぶりの族長交代の影響で現在里の中は色々とバタついている。そんな中でもリュージュがかなり頑張ってくれたらしく、現状で引っ越し可能な家を早々に確保してきてくれた。「てっきり、引っ越しはもう少し先になると思っていたわ」 手を繋いで歩きながらヴィクトリアは思ったことを口にする。「いつまでもあの家にいたら胎教によくないだろうって思って、急いだんだ」 まだ悪阻も始まっていないような初期であり、お腹もぺったんこだが、シドが死んだあの日の営みが実って、ヴィクトリアはリュージュの子供を妊娠していた。 リュージュはあの日からずっとそわそわしっぱなしで、毎日ヴィクトリアの匂いを嗅いで妊娠したかどうかを確認していた。 妊娠がわかった時にはリュージュは大喜びしてくれて、ヴィクトリアも笑顔になって二人で抱き合い、ヴィクトリアの体に新しい命が宿ったことを一緒に祝った。 それから、妊娠確定後しばらくして、毎日のように見ていたレインの夢を見なくなった。 あの夢は、「レインにいつか償わなければ」という自分の心の枷を反映させたもののように感じていたが、子供ができたことで意識が変わり、自分の中で覚悟が決まったのだと思った。 優先するべきはリュージュと子供であり、もし今レインが目の前に現れても、ヴィクトリアは大事な二人に我慢を強いるような行動は起こさない。「あの家だ」 やがて視線の先に一軒の家が見えてくる。その家を指差すリュージュを見たヴィクトリアは、はたと立ち止まった。「あれは……」 間違いない。その家は、ヴィクトリアの母であるオリヴィアが亡くなるまで、一緒に暮らしていた家だ。「あの家はお前が十一歳まで暮らしていた家だし、お前が住むならいいんじゃないかってオニキスに言われたんだ。 俺も一回下見したけど、八年前だからもう何の匂いも残ってない」
ベッドの上で、裸になった二人が絡み合う。「もうっ…… いいからぁっ…… 挿れてっ……」 リュージュはずっとヴィクトリアの全身への愛撫を続けるばかりで、なかなか結合してくれなかった。 リュージュがヴィクトリアの股の間に男根を当ててきても、割れ目やクリトリスを擦り立てるだけで、一番欲しい場所にはもらえない。 「ああ、そうだな……」 ヴィクトリアの懇願を受けたリュージュは、彼女の胸の先端から唇を離して了承したようなことを言うが、すぐにまたピンと勃った胸の先をねぶり始めて、膣に挿入している指を動かし、赤く色づいて膨らんだ淫芽を虐めてくる。「愛してるよ、ヴィクトリア」「ああ! ああーーっ!」 リュージュに愛を囁かれて胸がいっぱいになったヴィクトリアは、それだけで腰をカクカク揺らしながら、本日何度目かわからない絶頂を果たした。 絶頂から降りてきて激しく呼吸を繰り返すヴィクトリアの耳に、リュージュが膣から指を引き抜くクチャッという音が聞こえた。 下を見れば、脱力しているヴィクトリアの股間に唇を近づけようとするリュージュがいた。 この絶頂地獄はどこまで続くのだろうと思ったヴィクトリアは、今度は泣きながら懇願した。「挿れてぇっ! 早く突いてっ! 奥まで埋めてぇっ!」 恥ずかしいという感情は既に消え去っていて、ヴィクトリアは自分の手で秘裂を開くと、リュージュの目前にすべてを曝け出した。「……本当にいいか? 今日ヤったら子どもができるぞ」 クンニを直前で止めたリュージュは、行為前にも確認したことを再びたずねて来た。 もしかしたらリュージュも、本当は子供を作ることに少しためらいがあるのかもしれない。「いいの! 欲しいの! 赤ちゃんください!」「わかった。いくぞ」 決意したのだろうリュージュはそう言うと、ヴィクトリアの脚の間に体を滑り込ませた。 リュージュはヴィクトリアが広げたままの膣口に先
「お前、やっぱり…… レイン――」「そんなことないわ!」 リュージュの口から「レイン」の名前が出た途端、ヴィクトリアは話を遮るようにすかさず口を開いた。「私が愛してるのはリュージュだけよ! リュージュ以外の人には、抱きしめられるのもキスされるのも無理だったもの!」「無理だった、なんて、経験してきたような口振りだな?」 リュージュがいぶかしげな表情で言うのを受けて、ヴィクトリアは動悸を感じた。(今日のリュージュは冴えてるわね!) 夢の中に現れたレインは怖い顔をしていて、なのに、ヴィクトリアを抱きしめてキスしようとしてきた。「ゆ、夢の中の話よ? 夢の中でレインが襲いかかってきて、抱きついてキスしようとしてきたけど、腕を振り払ってすぐに逃げたから、何もされてないわ」 そしてその後追いかけっこが始まったが、撒いてやった。夢の中の話だが。「お前がレインじゃなくて俺を一番に愛してくれているのはわかってるよ。 実はさっきお前に『愛してる』って言われるまでは、もしかしたら『番の呪い』が解けてないんじゃないかって、心配になってたけど…… なあ、一番最初に俺と体を繋げた時に、頭の中で『カチカチカチ』って音がしなかったか?」「そういえば…… そんな音がしていたわ」 ヴィクトリアの答えを聞いたリュージュはうなずいた。「俺にも鳴ったよ。その音は番を得た時に自分の頭の中だけで鳴るらしい。相手と番になったことを示す印みたいなもんだ。 でも、中には体を繋げても音がしないこともあるって聞いたことがあったから、ちょっと心配になってた」「そうなのね……」 母を思春期前に亡くして、里の交友関係も狭かったヴィクトリアは、そんな話は誰からも聞いたことがなかったし、本で読んだこともなかった。 ヴィクトリアはふと、『番になる音』が鳴る前に、ガラスが割れるような音を聞いていたことも思い出した。(もしか
脱衣所でリュージュに体や髪の毛を拭いてもらう。 振動が伝わりプルプル揺れる乳房をリュージュが食い入るように見ていたので、揉まれたり食べられたりするのだろうかと思ったが、タオル越しに触れる以外でリュージュが何かをしてくることはなかった。 リュージュは服が濡れてしまったので自分も風呂に入ると言い、浴室に消えていった。ヴィクトリアは脱衣所にリュージュがあらかじめ置いていた服に着替えた後、リビングに向かった。 リュージュが作ってくれた鍋料理を台所に持ち込んで温め直す。お腹はペコペコだったが、リュージュが来てから一緒に食べようと思った。 鍋の火を止め、ソファに座って休憩していると、それほど時間も置かずにリュージュが現れた。「なんだ、先に食べていてよかったのに」「一緒に食べたかったの。それに臨時集会のことも気になるし、食べながら話を聞こうかなって思って。リュージュの話って集会のことよね?」「えーっと…… まあ、それもある……」 リュージュの返事はどこか歯切れが悪かったが、ヴィクトリアが肉料理を皿に盛りつけようとすると、リュージュもそばに寄って来て、二人で仲よく食事の準備をした。 ****** リュージュによれば、やはりシドの処刑は予定通り執行されたそうだ。 そのことを聞いた瞬間にヴィクトリアは目を伏せてポロポロと涙を流した。 相向かいに座っていたリュージュは食事を止めて席を立つと、「大丈夫か」とヴィクトリアを抱きしめて、落ち着くまでそのままでいてくれた。 リュージュは涙こそ出さなかったが、ヴィクトリアに感化された様子で、少し目が赤くなっていた。 酷い父親だったが、リュージュにとっては実父であり、悼む気持ちはあるのだろう。「しょうがないよ。あいつは、それだけのことをしてきたんだから」 ヴィクトリアがひとしきり泣き、落ち着きを取り戻した頃に、リュージュが冷めてしまった料理を小鍋を使って温め直してくれた。食事を再
シドは「お別れ宣言」の後、人間の番とは、金品などの補償を多めにしたり望む者には人間社会に帰らせたりするなどして、比較的穏便に別れられたそうだが、獣人相手にはそうはいかない。 シドが銃騎士隊に捕まり処刑される情報が里に流れた後、シドの死を悲嘆した何人かの番たちは、後を追おうとして自死している。 獣人にとって番との別れとは、自死に追い込まれるくらい辛いことだ。 「シド、あの……」 「やめろ」 シドはヴィクトリアがその先に続けようとした言葉を遮った。 「俺の番はお前だけだ。俺はお前以外の女はもう抱きたくない」 ヴィクトリアは、シドと番たちの間に一番最後に割り込んで、
「起きろ、ヴィクトリア」 最愛の男に名を呼ばれるのと共に、ズン、と体の奥に重い快感が走った。反射的に口からこぼれる自分の喘ぎを聞きながら、ヴィクトリアはまぶたを開けて眠りから目覚めた。 周囲は緑の樹木にあふれていて、今いるのは森の中のようだった。 完全に屋外なのにも関わらず、シドは寝ているヴィクトリアを貫きセックスを始めていた。一応二人とも服は着たままで、太い樹の幹にもたれたシドは股間だけを露出させた上にヴィクトリアをまたががらせ、ずらした下着の間から怒張を突っ込んでいた。 スカートに隠れて結合部は見えないが
処刑場広場での戦闘は、アルベールとレインの二人の間に巻き起こったものだけではなかった。 「あの男は西の里のS級獣人のオニキスだ! 捕獲しろ! 生死は問わない!」 叫んだのは、上級クラスの獣人の名前と、顔写真がある場合はそれらも全て把握している四番隊長だ。 四番隊長の号令によって、観客席から広場へと降り立ったオニキスに向かい、シドとの戦いで負傷していなかった銃騎士たちが一斉に発砲した。 ナタを投げてしまったオニキスは、鉛の銃弾を弾く得物は持っていなかったし、おまけに片手片脚を負傷中で松葉杖まで突いていたが、神業的な高速移動を披露して全ての弾道を避けた。 弾丸だけではなくて、急
「もう時間のようです。さようなら…… お父さま……」 言い終わるのと同時に、周囲の景色が変わった。 ヴィクトリアは再び、あのキラキラ光る砂粒が広がる空間に戻っていた。 目の前には、消えてしまったヴィクトリアを探し回るシドのいる夜の風景が広がっていたが、それも次第に遠ざかり――小さくなったのかもしれないが――見えなくなって、他の砂粒と変わらないほどの大きさになってしまった。 光る砂粒だらけの空間を漂うヴィクトリアには、体の怠さと眠気が顕著に現れ始めていた。 自分の魔力が急速に消費されているようだと感じたヴィクトリアは、魔力をセーブするために、かけたままだった「姿替えの魔法」







